呼吸器系合併症のある患者の麻酔
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呼吸器障害があっても,麻酔“するだけ”なら容易である.呼吸器の障害では,手術そのものは酸素と人工呼吸で乗り切れる.トラブルの起る可能性が大きいのは「術後」である.
術後,正規のICUでの呼吸管理が可能なら,たいていのものは麻酔が可能である.
問題は,手術をする側がそうした問題を認識していない場合,認識はしていても呼吸管理が不可能な場合に生ずる.
喘息患者の場合 慢性閉塞性肺疾患:呼吸機能に注意. 肺気腫では,安静時血液ガスは末期まで悪化しない.しかし,肺血管の予備力や喀痰排出の機能は落ちている.わずかな負担増加が術後の状態を決定的に悪くする. 肺切除後や結核のあと:残存肺の機能が非常に重要. 気道の異常 麻酔のトラブルで一番重要なのは,実はこの気道の異常ではないだろうか? 挿管困難 手術が気道にかかわる 手術が終わると気道があやしくなる: 例:術後開口不能になる手術(歯科の手術や形成外科の手術の一部) 気道に直接障害の加わる手術: 例:甲状腺や胸腺の手術,肺切除,気管や気管支の修復手術 運動系: 横隔膜を損傷する手術: 肝切除:以前の肝切除はひどかった.いまはあまり問題にならない. 胸腺の手術:術前に診断できなかった筋無力症が発症することがある. 麻酔の実際
麻酔方法と麻酔薬 吸入麻酔選択の理由:良好な覚醒が必要な場合 半身麻酔選択の理由:全身麻酔を避けたり,挿管や人工呼吸を避けたい場合や避けられる場合. 気道への考慮 場合によって,左右肺の分離換気が必要. 人工呼吸 肺容量や肺気量や肺機能が低下していれば,人工呼吸のパターンに注意を要する. 特に,左右肺の換気力学や血流に不均等があれば,分離換気が必須になるかも知れない. モニタ− パルスオキシメーターと気道内二酸化炭素モニタ−は当然だが,後者は通常のように数値を問題にするだけでなく,ふつうはあまり注意を払わない呼気曲線パターンが,このグループの患者では特殊な情報を持っている場合も多い.
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諏訪邦夫
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