脊椎麻酔・硬膜外麻酔+鎮静薬では「麻酔回路で」酸素を与える
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脊椎麻酔・硬膜外麻酔の際,とくに鎮静薬や鎮痛薬を組み合わせた際には,必ず「麻酔回路を使って」酸素を与えるようにして下さい!
理由: プラスティックマスクで酸素を与えていたのでは, 呼吸しているという証拠がない. 酸素濃度があまり高くならない.条件によってはほとんど空気とかわらない.
これに対して,麻酔回路+麻酔用のマスクを使用すれば バッグの動きで,呼吸が確実にモニタ−できる. 酸素はほぼ確実に100%を吸入.
1988年初頭に,アメリカ麻酔学会誌に掲載された報告であるが,脊椎麻酔で死亡事故が発生して医療過誤保険の支払いを余儀なくされた14症例を解析したところ,
事故発生の時点は脊椎麻酔の初期ではなく,手術がしっかり進行してから発生している. 全例になんらかの鎮静薬が投与されていた.という二つの点が判明した. 日本における脊椎麻酔の裁判例をみても同様なことがいえる.
状況から考えると,呼吸停止(主として気道の閉塞による)によるハイポキシアの影響がもっとも可能性が大きい.なお,上記14例のうちで完全に回復したのは1例のみで,半数の7例が死亡,6例が重篤な神経障害を残している.
[文献] Caplan RA,Ward RJ,Posner K, Cheney FW.Unexpected cardiac arrest during spinal anesthesia: a closed claims analysis of predisposing factors. Anesthesiology 68:5-11.1988.
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諏訪邦夫
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