IVCとSVCの血はどっちが赤い
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下大静脈と上大静脈の血液を較べてみたことがあるだろうか?
どちらが赤いだろうか. どちらが赤い筈だろうか. 理論的に考えたらどうだろうか. 実際にはどうだろうか. 開心手術の際に,カテ−テル内の血液の色をみていると判明する.そうして答は一通りではない. 一般論としては,下のように言える.
心臓の状態の比較的良好な患者では,下大静脈の方が遥かに赤いはずである.
下大静脈は,酸素摂取量に比較して血流量の多い臓器からの血流が多い. 典型は腎臓で,腎血管は酸素供給のためではなくて,尿の生成のために1L/分近い大量の血流を流している.腎臓の組織に酸素を送るだけなら,これほどの血流は不要. 程度は異なるが原理的には同じことが,腸管に関してもいえる.腸管の血流は 腸管が機能を発揮するのに必要な血流であって,酸素はそれほど大量には要らない. 上大静脈は,酸素摂取量が多くその割に血流量が多くない. 脳血流はずいぶん多いが,それでも脳は酸素消費が多い. (脳の酸素消費は,3ml/100gである.全身の酸素消費は3〜4ml/kgだから脳の酸素消費は,全身の平均値のほぼ10倍である.)
心臓の状態の極端に悪い患者やショック状態では,この関係が逆になることもある. 低心拍出量状態では下半身の血流 つまり,腎血流や腸管への血流が犠牲にされるからである.
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諏訪邦夫
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