手術開始前の血圧下降を避ける法
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ハロセンやアイソフルレンの麻酔の開始時,とくに手術の始まる前に血圧の下降に悩まされることがある.
麻酔開始から手術開始までに時間のかかる場合,人工呼吸を行う場合がことに深刻である.
ただ麻酔を浅くすると,手術開始で患者が動き出すので解決にはならない.
これを防ぐ方法は二つある.
人工呼吸をやめて自発呼吸で少しずつ深くする.
自発呼吸なら麻酔もゆっくりと深くなる. 陽圧による静脈還流の阻害効果もない. だから血圧は良好に保てる. パンクロニウムのような筋弛緩薬を投与して人工呼吸にして麻酔は浅く保つ. 筋弛緩薬と笑気だけなら人工呼吸をしても血圧は下がらない. 麻酔開始の時点で血圧が下がって輸液を沢山やったり,あわてて昇圧剤を入れるのは,患者に対してよくないし,みっともない.
こんなところでおたおたしないように心がけよう.
蛇足:1990年代後半になって,気管内挿管に大量のベクロニウムを使用するようになり,その後は浅い麻酔でしばらく人工呼吸ができるので,この問題は自然解消にむかっている.
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諏訪邦夫
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