麻酔によるCO中毒
-------------------------------------------------------------------------------- 一酸化炭素中毒の治療に,呼吸管理やOHPなどを通じて麻酔医が重要な役割を果たすが,これとは独立に麻酔中に一酸化炭素中毒のおこることがあるらしい.
[状況] 麻酔回路を使用して麻酔中,血液ガス測定で一酸化炭素が検出される.量は,ヘモグロビン全体の10〜30%程度. 一酸化炭素の測定は,通常は施行しないので,実際には報告例よりもずっと多いのかもしれない. [症状] はっきりしない.ハイポキシアの症状がでることもありうるが,Pao2 は低下しない.チアノ−ゼもでない. [報告] デューク大学で8例発生(下記の Moon 氏:論文にはなっていない),さらにフロリダで1例.いずれも下記のAPSFに掲載. [原因とメカニズム] 不明だが,仮説としては 吸入麻酔薬+二酸化炭素吸収剤でCOが生ずる. どうも実験で再現できない. 体内でヘモグロビンの破壊から二酸化炭素が生ずる 起ることは確実だが,通常は量はごく少ない. 麻酔回路を24時間以上使わないでおくと,CO濃度が100〜1000ppmまで上がることはある.しかし,頻度が低い.また,時間の要素以外に何か他の不明の要素が必要で,再現性がとぼしい. 低流量回路では重大だといえる. トリクロールエチレンは,二酸化炭素吸収剤と反応していろいろな有害産物を産生する.一酸化炭素もその一つである. 腹腔鏡手術での一酸化炭素産生? 上記の報告とは異なるが,理論的考察と動物実験では,腹腔鏡手術の際に腹腔内に二酸化炭素を吹込んでおいて電気メスを使用すると一酸化炭素が産生することが証明されている.臨床的にも問題になるかもしれない.
[解決策] 月曜日の朝一番など,しばらく使わなかった麻酔器を使う時は,十分にガスを流してから患者に適用する. 低流量麻酔はさける.特に,麻酔開始の時点では避ける. COHbをときどき測定する. パルスオキシメーターは頼りにならない. 腹腔鏡手術の際の一酸化炭素中毒はどうしたらよいだろうか.とりあえずモニタ−する程度のことしか思い当らない. 参考文献: Middleton VA, Van Posnak A, Artusio IF, Smith SM. Carbon monoxide accumulation in closed circle anesthesia system. Anesthesiology 26:715-9. 1963. Lentz RE. CO poisoning during anesthesia poses puzzles. APSF Newletter 9:13-16. 1994. Moon RE. Cause of CO poisoning, Relation to halogenated agents still not clear. APSF Newletter 9:13-16. 1994.
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諏訪邦夫
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