遷延無呼吸
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語義: 手術が終了し筋弛緩薬の作用が切れているはずであるのに,筋力が回復せず呼吸の抑制されている状態. 原因: 筋弛緩薬に原因のことは多いが,筋弛緩薬を全く投与していない場合でも発生するし,他の要素も関与する. 体温の低下(単独でも呼吸を抑制,筋弛緩薬の代謝・排泄を障害), 電解質・酸塩基平衡の異常 (低カリ血症やアシド−シスでは,不明の原因でリバースが困難) 筋肉の疲労 (術中に気道狭窄のまま自発呼吸,腹筋の損傷) 腎機能障害 肝機能障害 [確認] 換気を見ることも重要だが,基本的には筋弛緩そのもののモニタ−が必要. 四連法などで筋弛緩薬の作用残存をチェックする. [治療] 何はともあれ人工呼吸を継続. 自発呼吸を出そうとしてPco2 を不当に上げてはいけない(疲労と酸塩基平衡異常も原因). 体温を正常化.加温.電解質や酸塩基平衡を正常化. 尿量を維持.患者を覚醒させる. ネオスティグミンは原則としては反復投与しない.それ自体も筋弛緩作用があるし,筋弛緩薬の減衰が遅い条件では,ネオスチグミン(半減期1時間)が先に消失することもある この問題に関しては「積極策」は駄目,待ちが重要. 治療の基本は人工呼吸の継続と上記の異常の修正(循環の改善,電解質の補正,体温の正常化)などである.
[蛇足]横隔膜だけが回復したのではあやうい.気道周囲の筋力回復も重要.
キーワード:筋弛緩薬,体温,人工呼吸,自発呼吸,筋疲労,電解
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諏訪邦夫
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