電子版麻酔学教科書

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  遷延無呼吸 #46
投稿者  諏訪邦夫
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投稿日時  2001年02月11日 20時30分
遷延無呼吸

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語義:
手術が終了し筋弛緩薬の作用が切れているはずであるのに,筋力が回復せず呼吸の抑制されている状態.
原因:
筋弛緩薬に原因のことは多いが,筋弛緩薬を全く投与していない場合でも発生するし,他の要素も関与する.
体温の低下(単独でも呼吸を抑制,筋弛緩薬の代謝・排泄を障害),
電解質・酸塩基平衡の異常
(低カリ血症やアシド−シスでは,不明の原因でリバースが困難)
筋肉の疲労
(術中に気道狭窄のまま自発呼吸,腹筋の損傷)
腎機能障害
肝機能障害
[確認]
換気を見ることも重要だが,基本的には筋弛緩そのもののモニタ−が必要.
四連法などで筋弛緩薬の作用残存をチェックする.
[治療]
何はともあれ人工呼吸を継続.
自発呼吸を出そうとしてPco2 を不当に上げてはいけない(疲労と酸塩基平衡異常も原因).
体温を正常化.加温.電解質や酸塩基平衡を正常化.
尿量を維持.患者を覚醒させる.
ネオスティグミンは原則としては反復投与しない.それ自体も筋弛緩作用があるし,筋弛緩薬の減衰が遅い条件では,ネオスチグミン(半減期1時間)が先に消失することもある
この問題に関しては「積極策」は駄目,待ちが重要.
治療の基本は人工呼吸の継続と上記の異常の修正(循環の改善,電解質の補正,体温の正常化)などである.

[蛇足]横隔膜だけが回復したのではあやうい.気道周囲の筋力回復も重要.

キーワード:筋弛緩薬,体温,人工呼吸,自発呼吸,筋疲労,電解


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諏訪邦夫

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