電子版麻酔学教科書

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  バッキング(怒嘖反射) #44
投稿者  諏訪邦夫
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投稿日時  2001年02月11日 20時28分
バッキング(怒嘖反射)

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麻酔時とくに浅い麻酔レベルや麻酔終了時に起るバッキングは,基本的には「咳」である.咳の場合は喉頭が閉じるので胸郭や横隔膜の動きは小さいが,麻酔中はこれがないから動きが大変に大きくなる.


[防止法]麻酔を深くするか,刺激を押えるかしかない.
挿管時に十分に局所麻酔薬でスプレ−すること.ゼリ−も十分に塗布すること.気管内挿管のまま頚部を動かす必要のあるときは,麻酔を深くするか筋弛緩薬を投与.
手術終了時に体位変換の必要がある時は,

可能なら先に抜管してしまうか,
サクシニルコリンを投与する.筋弛緩薬が効いていればリバ−スはしない.
リドカイン1.5mg/kg静注も有効.
  ただし投与後1〜2分のみしか効かないのでタイミングが肝要.

蛇足:
バッキングとシャックリとは鑑別が必要である.治療法が異なるためである.
バッキングは呼気,シャックリは吸気である.
バッキングとシャックリとは異なる反応である.処置も違う.

クイズ:
「絶対にバッキングしない麻酔は悪い麻酔である」.何故か.

回答:
バッキングを指標としたED50のようなものを考えてみる.そうすると,「バッキングの可能性を減らす」とは,ED50よりどの位余分のレベルで麻酔しているかに対応する.
これは確率論ないし分布の考え方からいえることだが,

10%の確率でバッキング  ED50× 30%まし
1%の確率でバッキング   ED50×100%まし
0.1%の確率でバッキング ED50×200%まし

とかいう関係になる.(数値はあまり根拠はない.感覚的な値)
絶対に安全な車”を求めたら戦車にでも乗るより方法がないというのと同じ.

キーワード:咳,チュ−ブの刺激,リドカイン静注,シャックリ


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諏訪邦夫

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