気管支痙攣
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概念: 肺全体の気管支の攣縮である.病態は喘息発作と同一.
頻度: 喘息患者の麻酔では発生頻度が高い.しかし,喘息がなくても起り得る.
誘因: 麻酔薬の影響は少ない. 気管内挿管は明かに誘発要因となる. ネオスティグミンも誘発要因となる. 喘息発作を頻回に起している患者を,しっかりと治療せずに緊急性のない手術を行ってはならない.
気管支痙攣が手術中に発生すると治療困難である.最大誘因である気管内チュ−ブを,手術進行中に除去するのは危険だからである.
気管支痙攣の処置
[処置] 難渋する.基本は喘息発作の処置に同じ.即ち,アミノフィリン・β刺激薬(イソプロテレノ−ル)・ステロイドである. 喘息発作の治療薬としてハロセンを使うことがあるが,術中の気管支痙攣に対するハロセンの有効性は証明されていない.
[予防] バルビツレートは実験的には誘発傾向がある.臨床的には意義は少ないが,ミダゾラムや緩速導入でも可能なので,バルビツレートは一応避ける.実験的な根拠は明確でないが,サイオバルビツレートが特に悪いという意見もある. 気管内挿管は明かに誘発要因となる. 挿管は絶対に必要か?
[予防] 喘息発作を頻回に起している患者を対象に,緊急性のない手術を行う場合は,しっかりと治療しておく.治療薬をしっかり投与し全身状態を良好にしておけば,発症する可能性は少しは低下する.
気管内挿管なしの麻酔を採用する. オスティグミンを使わない麻酔を採用する.
キーワード:喘息,麻酔薬,気管内挿管,アミノフィリン,イソプロテレノール
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諏訪邦夫
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