一酸化炭素発生の原因解明!
-------------------------------------------------------------------------------- 日本語タイトル:一酸化炭素発生の原因解明!
[目的] 麻酔回路内で一酸化炭素が発生する状況を解明する.前篇の問題提起に対する解決篇である. [背景] 前号で一酸化炭素発生の報告があって,早速実験してしらべた. [方法] 通常の麻酔回路で,二酸化炭素吸収剤は2種類(ソーダライムとバラライム)を使用した.吸入麻酔薬は,ハロセン,エンフルレン,イソフルレン,デスフルレン,セヴォフルレンを1MACと2MACで回路に供給した.温度をコントロールするため,回路の大部分を恒温槽につけた.一酸化炭素と吸入麻酔薬はガスクロで定量した.ガスクロの一酸化炭素検出力は1〜10ppmである. [結果] 二酸化炭素吸収剤の湿度が断然重要な因子で,本来必要とされているだけの湿度があれば一酸化炭素発生は起こらない. 二酸化炭素吸収剤が完全に乾燥した場合,条件によって大量の一酸化炭素が発生した. ハロセンとセヴォフルレンでは発生量がごく低い.デスフルレン,エンフルレン,イソフルレンの三者で,この順序に高い. 分子内の -CHF2 がポイントで,ここからCOができるらしい. 完全乾燥のバラライム+高温(45℃)の条件でデスフルレンを使用した場合,一酸化炭素濃度は2万ppm(2%)にも達する.ガスを流し続けても,2時間後で2千ppmを維持した.ソーダライムではやや低い. 所見は原著論文として通常雑誌に投稿した. [結論] 乾いた二酸化炭素吸収剤(特にバラライム)+高温の条件で,吸入麻酔薬から一酸化炭素が発生する.デスフルレンが特にわるい. [解決策] 二酸化炭素吸収剤の加湿に注意. 前回の提案で高流量を勧めたが,湿度が高い方が安全で,逆に低流量を勧めるべきかもしれない. [解説] サンフランシスコの Eger 氏のグループの研究である.さっさと実験して解答を得た科学的態度・活動性・体勢・能力など,実に素晴らしい.“彼等の薬”ともいえるデスフルレンが断然わるい成績なのも皮肉だが,それも正確に報告している. 解説者:[諏訪邦夫]
文献:Fang ZX, Eger EI. Source of toxic CO explained: -CHF2 anesthetic + Dry Absorbent. APSF Newletter 9:25-30. 1994.
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諏訪邦夫
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