電子版麻酔学教科書

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  喘息と麻酔 #33
投稿者  諏訪邦夫
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投稿日時  2001年02月03日 00時42分
喘息と麻酔

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喘息と麻酔
喘息の既往があったら,できるだけ発作が起こらない条件を整える.「とにかくやってみて,起こったら対応する」という方策をとるのは賢明とはいえない.
術中の喘息発作は避けるに越したことはない.一般の発作と異なって,“手術が進行している”という条件が加わるから,治療がままならない場合も少なくない.麻酔中の発作(気管支痙攣)は始末が悪い.できるだけ防止するのがよい.治療より予防! の例. 即ち

麻酔法を選択する.気管内挿管が避けられるなら避ける.これには局所麻酔の選択を含む.
麻酔薬を選択する.
上と関係するが,「しっかり麻酔する」「全身麻酔なら深い麻酔が必要」と考えられている.理由は下記.
モニタ−と治療薬を準備する.
吸入気の給湿
発作の予防薬−特に最近一年以内に発作を起している場合: 予防的に気管支拡張薬を投与する. ステロイドも念のために与える.ハイドロコーチゾンで5〜10mg/kg程度. 喘息に対するステロイドの効果や使用には問題も多いが,手術に関する限り,発作が起ってからのステロイド使用は遅すぎる.使用するなら,手術前に.
純粋のα刺激薬(ネオシネフリンなど)は,喘息発作を誘発する可能性がある.したがって,喘息患者に対する昇圧薬は,エフェドリンが第一のチョイス.
喘息と麻酔関係の薬物:
 基本的には,薬物との関係はあまり強くない.
吸入麻酔薬はどれも使用が可能である.ハロセンとイソフルレン(とエーテル)は発作を抑える作用が知られている他に,発作の治療にも使用できるとされている.
ケタミンは気管支拡張作用がある,とされている.
サイオペンタルは,実験的理論的には発作を起こす方向の作用である.実際的には使用できるという意見も強い.
ベンゾディアゼピン・フェンタニルは特に作用なし.
筋弛緩薬も作用なし.
ネオスティグミンは避ける.ネオスティグミンが気管支痙攣発作を起こす可能性は,理論的にも実際にも確認されている.
脊椎麻酔や硬膜外麻酔による交感神経ブロックが気管支痙攣発作を起こす作用があるとは,理論的にも実際的にも考えられない.理由は下記.
[脊椎麻酔や硬膜外麻酔による交感神経ブロックが気管支痙攣発作を起こすか]
脊椎麻酔や硬膜外麻酔による交感神経ブロックが気管支痙攣発作を起こすことのない理由が二つある.
気管支に対しては,交感神経と副交感神経は拮抗しない. 末梢気管支は,胸部交感神経の支配をうけていない.気管支のカテコールアミン受容体は血管壁にあって,血液中カテコールアミンの作用を受けている. 副交感神経刺激では,気管支けいれんが起りやすくなる.しかし胸部交感神経ブロックでも,気管支けいれんが起りやすくならない.
交感神経系のα受容体は気管支収縮作用らしい. 交感神経系のβ受容体が気管支拡張作用であることは確立している.これよりは確度は低いが,交感神経系のα受容体は気管支収縮作用をもつらしい.この点は,動物でも薬理学的な実験でも確認されている.
 したがって,この点でも胸部交感神経ブロック施行によって,気管支けいれんが起りやすくならない.
キーワード:麻酔法の選択,麻酔薬の選択,気管内挿管


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諏訪邦夫

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