メピバカインとブピバカインの使い分け
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硬膜外麻酔・硬膜外ブロックにメピバカインとブピバカインをどう使い分けるか?
考えるべき要因と考え方
代謝量:ブピバカインは力価がほぼ4倍高く,作用時間は2倍以上である.したがってブピバカインの使用量・代謝量はメピバカインの1/10近い.それだけ肝臓への負担は軽い.ブピバカインとメピバカインの両者で,肝臓での代謝のメカニズムは基本的に同一である.作用時間の差は,作用点との結合力による.したがって,投与量の少ないブピバカインの方が,肝臓への負担は少ない.
急性毒性:ブピバカインの毒性は,心臓に対しては“質がわるい”ということになっている.心筋蛋白との結合が強く,心臓の抑制が強い.これはある程度確立した事実である.大量を一度に血管にいれないように注意すること.
作用の開始と持続:作用開始はブピバカインが遅く,メピバカインは速い.持続はブピバカインが2〜2.5倍位長い.
力価:同じ量で比較して,ブピバカインはメピバカインの4倍ということになっている.でも本当だろうか? ブピバカイン0.5%の筋弛緩はメピバカイン2%の筋弛緩と同じ位強いか? 筋弛緩の臨床研究は,神経筋接合部のレベルのものが多いので,こういう比較は行われているだろうか? そもそも,どういう手順で研究できるか不明である.
持続はメピバカインでボラスならブピバカイン メピバカインは消褪が速いので,数時間程度の持続注入ならこちらを使用する.ブピバカインは消褪が遅いので,ボラス注入ならこちらを使用する. ただし,本当に長時間の使用で投与量が多くなるなら,肝臓への負担を考えることになるので,ブピバカインを使用する.それに,単位体積あたりの力価×作用時間もブピバカインのほうが断然大きいので,ブピバカインならポンプの付替の頻度が少なくて済む. 時間で8時間以上,量はメピバカインで1000mg以上になる場合.メピバカインでスタートしておいて,時間が長くなることの判明した時点でブピバカインに切り換えてもよい. ブピバカインの心血管作用 他の局所麻酔薬に比較して,ブピバカインは心血管作用が強いことは確実なので,この群の患者,つまり心臓の電気現象に障害のある患者と心筋の収縮力・拍出力に問題のある患者では,大量使用は避けるのが安全であろう.
参照:ブピバカイン(マ−カイン)
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諏訪邦夫
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