完全静脈麻酔 Total intravenous anesthesia
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概念: 静脈麻酔薬のみに頼った麻酔法.吸入麻酔薬は一切使用しないことを旨とするが,“笑気は使用してもよい”とする立場もある.
利点: 麻酔器が不要である. 手術室空気に汚染の問題がない. その他,吸入麻酔薬使用に伴う問題がすべてなくなる.
方法: 作用の消褪の速い静脈麻酔薬の持続注入を中心にする. プロポフォルによるもの スフェンタニルまたはアルフェンタニル(いずれも作用時間の極度に短い麻薬)によるもの その他:ケタミン,ベンゾディアゼピンなども組み合せるもの
問題点: プロポフォルは認可されたが,スフェンタニル,アルフェンタニルの二者は日本では未認可で,認可される可能性は高くはない. ある程度の手術では,各種モニタ−の使用は必須である.吸入麻酔薬使用の使用が避けられることがどれだけのメリットになるか,疑問を投げる向きもある. とはいえ,あるグループの患者の麻酔を中心に地位を確立して行くことは確実であろう. プロポフォル以前にも,日本で使用の許されている薬物を組み合せて完全静脈麻酔を達成しようとする試みがいろいろとあった.困難は伴ったが,不可能ではない.
蛇足: ケタミンが麻酔に使用されるようになったのは1960年代の終わりだが,その時は“これで麻酔器がなくても麻酔が可能になった”と持て囃された歴史がある.
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諏訪邦夫
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