吸入気酸素濃度はなぜ33%以下にしないか
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全身麻酔においては,吸入気酸素濃度は少なくとも33%に保持する.その理由を考える.
麻酔+手術では肺のガス交換能・酸素化能が低下する 麻酔,とくに手術の麻酔では肺のガス交換能・酸素化能が低下する.これは事実として判明している. A−aDo2 が拡大するといってもいいし,肺のシャントが増加するといってもいい.メカニズムは別の項目で考察する.
対応 悪化した肺のガス交換能・酸素化能の下で,動脈血酸素のレベルを正常値に維持するには,吸入気酸素濃度を正常より高く保つのが有用である. この点は,最初は経験的に判明し,さらに血液ガス測定が可能になった1960年代に徹底的に研究されて確立した.パルスオキシメトリーが真っ先に使用普及した領域が麻酔だったのも,この理由である. 33%という吸入気酸素濃度は,“これならば常に必要充分”というわけではないが,多数例の解析で確立したものである.
古い: 現代の麻酔で,パルスオキシメーターを使用していて,それが信頼できるなら,“吸入気酸素濃度33%”にこだわる意味は少ない.しかし,実際にもこの辺からそう大きくは下げられないだろう.つまり,F98(Sao2 が98%を達成するFio2 )は,33%をさほど大きくは下回らないであろう.
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諏訪邦夫
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