手術台から運搬車へーーひとり10kgの原則
--------------------------------------------------------------------------------
手術と麻酔が終了して手術室から回復室への移動に際しては,一般には患者を手術台から運搬車に移す必要がある.
肥満患者・身体の大きな患者では一仕事である.
おなじ「重い」患者でも,筋骨隆々で大きくて重い患者と,肥満で重い患者とでは後者の移動のほうが大変である.前者では「手がかり」がしっかりしているのに,後者では「のれんに腕押し」的でぐにゃぐにゃして持ちにくいからである.
下の二つのルールが有用.
移動の際に便利なようにあらかじめ布を敷いておく. 経験的に一人10kgまではうまく移動できる.したがって,患者の体重を10でわった人数を集めて移動する. 蛇足:
1992年夏に,180kgの患者が全身麻酔を受けたことがありました.18人で持つことは不可能で,この時はローラーを使用しました. 手術室で働く人は,腰を大切に!
これは本当の話:ある日のこと.大きな患者さんの手術が終了して抜管して,さて運搬車に移そうというところで,「こんな重い患者は動かすのが大変だよなあ」とか話していたら,麻酔から醒めたばかりの患者がむっくり起き上がって,となりの運搬車に自分で移動しました.口で動かしたように感じました.1994年4月27日のこと,手術は耳下腺腫瘍切除でした.
1996年秋から,市原の帝京大学市原病院に移りました.そこでは,運搬車がそのまま手術台になるタイプのものを使用します.患者を術後に運搬車に移すのは,回復室から病室に帰る時になるので,少し楽です.ただし,この手術台には他の欠点がありますが.
--------------------------------------------------------------------------------
諏訪邦夫
| |