脳波(EEG)モニター
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[対象と装置] 麻酔の深度評価の目的. 心臓手術や脳への血管の手術の際ので脳循環の評価としては,血流の直接測定やNIRS(近赤外線による脳内ヘモグロビン測定)が開発されたので,意義が小さくなった. 古典的な脳波記録は使わず,脳波の周波数パワースペクトル解析あるいはこれをさらに簡略化したもの(スペクトルエッジ)を用いる. [施行法と結果] 頭頂部からの単一の誘導で測定・解析.
[判定と問題点]欠点は数多い. ノイズの影響を受けやすい. 麻酔深度の判定法としては薬物や個人差などが大きすぎる. 脳循環のモニターとしての意義も減少してきた.
[注] 脳波の問題を各方面から研究している森健次郎氏(京大)が“脳波はモニターとしては使えない”と強く主張している. 実際,論文を読んでみても,“麻酔のレベルを脳波でみよう”と試みて,“これではだめだ”“何とかならないだろうか”“他のパラメーターの方が優れている”という趣旨の論文が目につく.脳波の研究がそれだけ成熟している証拠でもあろう. 脳波が,基礎研究や臨床研究においていろいろな面で有力なパラメーターであることは事実であるが,手術室や集中治療のモニターとなると,有用性が減ずる.特に,麻酔深度のモニターとしての可能性はますますうすらいでいる.
[脳の活動か脳の“健常性”か] 「脳の活動」と規定すれば使えるのは脳波だけであるが,麻酔の立場から必要なのは「脳の健常性」(integrity)なのである.脳波をあきらめて血流や酸素化レベルをモニターする方が有用なのかもしれない.
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諏訪邦夫
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