電子版麻酔学教科書

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  小児麻酔は何が特殊か #27
投稿者  諏訪邦夫
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投稿日時  2001年02月10日 14時07分
小児麻酔は何が特殊か

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 小児の特徴は「小さい」ことだけではないが,しかし「小さい」ことは重大である.


小さいものは壊れやすく,その取り扱いには正確な動き・動作が要求される.
変化の速いのも特徴である.大きさは小さいのに「流れ」(分時換気量・心拍出量・エネルギ−代謝量・酸素摂取量など)は相対的に大きい.つまり「時定数が小さい」のである. (“時定数”を理解しよう)
これが変化の速い最大の理由である.

 こうした成人との差は基本的には量的な差であるが,時には質的な差となることもある.成人では問題にならないようなことを,小児では考慮する必要が出てくる.給湿や体温管理に厳密さの要求されるのがこれにあたる.

 もう一つ,「小児」といっても,2kgの未熟児からほとんど成人に近い60kgの中学生まで,幅が広い.その差は30倍もある.成人の幅は,せいぜい2〜3倍程度である.この「幅」「多様性」が小児科学領域の特徴であろう.

蛇足:比較生理学の研究によると,時間の速さは体重の(1/4)乗に比例して(反比例してというべきか)速くなるという.体重が1/16になると,時間は2倍になるということ.
 新生児3kgと成人60kgとは,体重で20倍の差があるから,新生児の時間の進みは成人の2倍以上速いことになる.
(もっと速いかと思ったけれど? 上記のルールは,広く動物界のデータに基づくもので,成人と小児の比較ではない.)

文献:本川達雄 ゾウの時間ネズミの時間 中公新書 1087,中央公論社,東京 1992.



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諏訪邦夫

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