閉鎖神経ブロック
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[対象と使用薬液・作用時間] TUR(経尿道的切除術:前立腺と膀胱腫瘍)の際に,電気刺激が閉鎖神経を刺激して下肢の内転を起こす.そうすると手術がやりにくいので,この神経ブロックを施行して下肢の内転を防ぐのである. このトラブルは,脊椎麻酔や硬膜外麻酔では防げない.刺激点よりも末梢でブロックする閉鎖神経ブロックが障害を防止する唯一の方法である. 総量で1%メピバカイン10ml程度. 痛覚は領域がはっきりしない.脊椎麻酔施行後に行なう場合は,特にわかりにくい. 確実にブロックするには,電気刺激で位置を確認する. 持続は薬物がどの位確実に入ったかによる.メピバカインで3時間.
[手技] 患者は仰臥位.対象下肢を軽く外転外旋する. 恥骨の対象側の端(左なら左端,右なら右端)から1.3CM外側,1.3CM下が刺入点である. 針をまず垂直に進める.骨にあたる.これは恥骨の水平枝の部分であり,ここよりもやや外側に閉鎖神経が出てくる. したがって,針を外側上方に向け直して,電気刺激しながらもう一度針を進める. 普通の体形の人なら,皮膚からの深さは5〜6cmを超えることはない. 電気刺激に応じて内転運動がおこれば,そこでわかる.少しでも見られれば大丈夫である. 時には,針が閉鎖孔に直接入ることもある.その場合は閉鎖神経全体をまとめて電気刺激することになるので強い内転運動がおこる. 薬液を注入する.
[合併症] 乱暴な手技による神経損傷 血腫
蛇足: 神経刺激装置を使えばはずすことは稀だが,しかしこの目的には“効かなくてもそれほど困ることもない?” 神経刺激をしながら局所麻酔薬を注入すると,みるみる下肢の動きが低下していくのがわかる.神経ブロックの様子を目でみえるのが実に印象的である.
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諏訪邦夫
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