静脈内局所麻酔薬注入ブロック(ビールブロック:ビーアブロック)
--------------------------------------------------------------------------------
Bier block
[対象と使用薬液・作用時間] 前腕及び手の手術. 手術時間が1時間以内であることが確実なもの. 1%リドカインを2ml/10kg体重を使用. タ−ニケット使用中は有効だが,その時間は最大限2時間まで.
[手技] 術野になるべく邪魔にならない手又は前腕の静脈に細いカテ−テル針を挿入する. 適当な延長管を付けて固定しておく. 上肢にエスマルヒを巻いて駆血し,その上端にタ−ニケットを巻く. エスマルヒを外して,用意してあった局所麻酔薬を注入. 同様の手技は,下肢にも使える.しかし,必要な薬液量が多く,確実性に乏しいために,上肢ほどには有用性が高くない.
[作用のメカニズムと合併症] 局所麻酔薬が血管の全体に広がり,神経と神経終末器官を麻痺させる. 時に広がりが不足する. タ−ニケット部位の疼痛. 手術が終了したらタ−ニケットを外す.この際に,軽い局所麻酔薬中毒が見られることがある.
[ダブルタ−ニケットの使用] 通常の方法では,タ−ニケット自体が痛い. タ−ニケットによる痛みを防ぐために,タ−ニケットを二つ使用する方法もある.またそのために開発された2連のタ−ニケットも販売されている.体幹側のタ−ニケットを加圧してブロックを施行した後に,無痛になった部位に巻いてある末梢側のタ−ニケットを加圧して駆血する方法である.
[グアネシジンなどの使用] 末梢血管の狭窄に対して,グアネシジンなどの血管拡張薬を併用することもある.
蛇足: Bierは,今世紀初頭に本法を発表したドイツの医師の名.他にもいろいろ業績が多い. このブロックは成功率が非常に高い.技術もあまり要らない.「だから面白くない!」
文献: 長瀬真幸他.Guanethidineによる末梢交感神経ブロック ペインクリニック 6:287-293 1985.
--------------------------------------------------------------------------------
諏訪邦夫
| |