“半身麻酔”という言葉は?
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1992年のあるとき,研修医の先生が患者からの言葉として“半身麻酔”という単語を使いました.この患者は“全身麻酔”に対する用語として,脊椎麻酔のことをそう呼んだようです.
それを聴いていて,“これはなかなかいい単語だな”と感じました.英語の“ regional anesthesia ”に当る訳語としてです.英語の“ regional anesthesia ”は,“脊椎麻酔や硬膜外麻酔”にも使います.場合によっては,腕神経叢ブロックのようなある程度広範囲のブロックにも使います.しかし,前者の使い方が有力です.
実際,われわれの意識の中でも,脊椎麻酔と硬膜外麻酔は,技術としてはしっかり分けていますが,生理を論ずる時などは一緒にしていることもよくあります.
“ regional anesthesia ”の学会訳語は“部分麻酔”だと思います.私もとりあえず使います.しかし,この用語は気に入りません.理由はいうまでもないでしょう.
ほかの医学用語をみると,“ regional ”には“局所”をあてている場合が多いようです.“局所潅流”とか“脳局所血流測定”などです.しかし,麻酔の場合は“局所麻酔”は“local anesthesia ”に対応しているから使えません.
それで半身麻酔の登場です.脊椎麻酔/硬膜外麻酔を表現する用語としては,“半身麻酔”というのはまことにスマートな好い用語ではないでしょうか.
皆様方のご意見はいかがですか?
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諏訪邦夫
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