脊椎麻酔の合併症と処置
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[低血圧] 原因は静脈還流の障害による(脊麻ショック).したがって心拍出量が低下している.「血管が開いて血が流れやすくなった」からではないので,治療が必要.治療は 頭低位にする 輸液 昇圧剤の投与
[呼吸の障害] 高位麻酔による. 治療は酸素の投与,気道確保,人工呼吸. 脊椎麻酔施行から時間を経て発生することがある.こちらは見落とす可能性があるので重大である. 脊椎麻酔による心停止:決着症例の解析
[不穏] 原因は種々.全身麻酔への切りかえを考慮.ただ「一寸鎮静剤を」というのは不可.
[悪心・嘔吐] 迷走神経優位になるためと脳循環障害(低血圧による)に起因すると考えられる.治療はアトロピン(0.5mg静注)と低血圧への処置. 鎮静剤の使用は要注意.既に低下した血圧を更に下げたり,脳循環を悪くしたりする危険がある.
[脊椎麻酔後の頭痛] 脳脊髄液の漏出によって頭蓋内圧が低下することによる. 治療は離床を遅らせること(仰臥位では頭蓋内圧は低下しない).輸液を十分に与える.脊椎麻酔の部位に患者自身の血液10mlを注入して凝塊を作って脳脊髄液の漏出を防ぐ.
[遅発呼吸停止と心停止] 脊椎麻酔施行直後の呼吸停止と心停止は対応しやすいが,これとは別に,遅発性の遅発呼吸停止と心停止の存在が知られている.頻度は低い.平均40分.鎮静薬と鎮痛薬の使用が関係している. 脊麻後遅発性呼吸循環停止を参照
脊椎麻酔で男性性機能は障害されない
Adam−Kiewicz動脈損傷による麻痺
ごく稀だが,重篤な障害.その項目を参照.
キーワード:低血圧,脊麻後頭痛,脊麻ショック
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諏訪邦夫
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