電子版麻酔学教科書

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  脊椎麻酔のやり方と注意 #31
投稿者  諏訪邦夫
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投稿日時  2001年02月09日 22時44分
脊椎麻酔のやり方と注意

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[準備と使用薬剤]
消毒液を手に付けないこと.消毒液はすべて神経毒だから,この注意は他の処置の場合よりも厳しい.

テトラカイン10〜13mg
ブピバカイン15〜20mg
ヌペルカイン0.3%溶液で2〜2.5ml
状況により増減するのはもちろんである.
針は細いほどよいので,通常は#25を使用する.

[施行]
脊柱の後屈が大切.側屈を起さないように.
“できるだけ丸くなる”ように要求してもいいが,
“背面が垂直になるように”と患者に注文しても,患者は理解できない.身体を丸くした時に,背中がどちらに傾くかのイメージを患者はもっていない.患者が傾いている分は,施行する側が補正する.
正中線上に正確に刺入する.
矢状面を正確に進む.
深さは,普通の日本人で4cm位.6cmを越えるのは稀である.

[患者が電撃痛を訴えた場合]
針が神経根に当たっているのだから,針の位置を変える.

[うまくいかない場合の解決法]
穴布を用いている場合は外す.そうすると全景が見えてやすくなる.
患者を起こして,座位をとらせる.左右に曲がりにくく,正中を正確に進みやすくなる.
手をかえる(施行者を交代する)
うまくなれば強い後屈は不要である
 (針のとおるスペースのみ必要:ブロックの権威と議論した時,彼が“You need a hole, but you don't need a big hole”と言い放った!)
テトラカインとヌペルカイン
 ヌペルカインの項目でも述べたように,ヌペルカインは不可逆的な障害を起こす可能性が確認されている.
 テトラカインに切り換えることが望ましい.テトラカインの欠点は,日本では粉末の製剤しかなくて,溶解の手間が一段階余分に必要な点である.
細いクインケ針は穿刺後の頭痛は少ないが,失敗率が高いという論文が最近出た.

Lynch J, Arhelger S, Ernst IK. Post-dural puncture headache in young orthopaedic in-patients: comparison of a 0.33 mm(29-gauge) Quincke-type with a 0.7 mm(22-gauge) Whitacre spinal needle in 200 patients. Acta Anaesthesiol Scand 36 (58-61) 1992

ただし,この論文は針の太さが違いすぎて,比較には異論もでるだろう.クインケ針というのはふつうの斜面型の針,ウィタカ針というのは鉛筆の針のような形の針.

キーワード:正中面,矢状面



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諏訪邦夫

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