硬膜外腔の確認法 硬膜外腔
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identification of epidural space
硬膜外麻酔の際に硬膜外腔に針が入ったことの確認法は,多数ある.
“Loss of resistance”−ふつう「抵抗が急になくなる」いわゆる“Loss of resistance”を使用する.これはもちろん有用であるが,これ一つだけでは不十分で,他の方法も併用して成功率を上げて下さい.
カテ−テルを入れて見る.針先を越えて楽々と10cmも入るようならまちがいなく硬膜外腔で,しかも正中に近い. 2〜3cmしか入らないようなら,ただの緩い組織かもしれない. 硬膜外腔に入ってはいても,針が横にそれて硬膜外腔から神経根のところにつかえている可能性もある.
筆者は,カテ−テルを入れる前に局所麻酔薬を入れないことにしている.カテ−テルが神経根をつつくと痛みが起こるなら,神経根に触れているのだから,カテーテルが正中をはずれていることを示している.その部位を患者に聞けば,どちらにカテ−テルがはずれているか判明する.カテ−テルが横にそれると,硬膜外麻酔そのものが効かない可能性もある.
患者が痛みを訴えて,針のそれている方向が判明したらカテ−テルを一度針の中まで戻し,針の先端が正中へ向かうように針を回転してからカテ−テルを再び進めると成功することもある.針先が頭を向いていて左に痛みを訴えたら時計方向に回転するのである. 硬膜外麻酔用のカテ−テルで神経根を圧迫して損傷する報告がある. 空気と生食:Loss of resistance は,本来は生理食塩水を使用すべきである.現実には,空気を使用する場合もあるが,注入量は最小にすること.理屈から考えて,空気が大量に硬膜外腔に存在すると,その部位には局所麻酔薬が浸潤しないから,麻酔が一部抜ける要素になるだろう.
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諏訪邦夫
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