硬膜外麻酔の薬の加え方
--------------------------------------------------------------------------------
[薬剤投与のスケデュール] 硬膜外麻酔“だけ”で麻酔するのか,全身麻酔などを併用するのかで,大きく異なる.初心者は原則として前者は避ける.
[古典的な投与法] 初回に15ml〜20ml投与し,あとは45分から1時間毎に,8ml〜6ml程度を追加していく.濃度はメピバカインとして1%から2%までのものを使用する.
[少量頻回追加法:全身麻酔併用の場合] 全身麻酔併用の場合は,急いで硬膜外麻酔を効かせる必要はないので,始めから維持量に近い量を与えていく. 日本人成人で2ml/15分が標準である.8ml/時間にあたる.薬物は1%メピバカインを原則とし,筋弛緩の不足は筋弛緩薬で補う. 全体として麻酔が不足している印象があれば,同じ投与量を1回だけ余分に加え,さらに1回毎の投与量を少し増加させるか,投与間隔を10分に短縮する. 逆に麻酔が深すぎればまず投与を1回休み,さらに投与量を1.5ml程度に減少させるか,投与間隔を20分に延ばす. 最初だけは,4mlずつ5分間隔で3回位使えば,効果の発現が早い.
[少量頻回追加法の利点] 追加の度毎の血圧下降がなく,昇圧薬の使用量が大幅に減少する. 硬膜外麻酔でのこの考え方は,吸入麻酔の際に手術と患者の反応に応じて気化器のダイヤルを細かく動かすのと同じである. 少量頻回追加法では,局所麻酔薬の広がりがよくないので,投与量は多く必要である. しかし,血液濃度は低く維持できて,中毒は起りにくい.
--------------------------------------------------------------------------------
諏訪邦夫
| |