電子版麻酔学教科書

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  硬膜外麻酔と全身麻酔の併用 #20
投稿者  諏訪邦夫
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投稿日時  2001年02月09日 22時33分
硬膜外麻酔と全身麻酔の併用

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 現在,大きな手術を対象とした場合の標準的な麻酔法は,全身麻酔単独でなくて硬膜外麻酔を組み合わせる.
 硬膜外麻酔というのは脊髄の近くに細いプラスティックの管をいれ,ここから薬物を注射して脊髄やそこへ出入りする神経の働きを麻痺させる方法である.
 硬膜外麻酔自体は,脳にはほとんど作用がない.しかし,二つの経路で交感神経系を強力に抑える.

脊髄レベルで神経の働きを切り,手術の刺激が脳に達するのを抑える.
脳が興奮しても,その興奮が脊髄から交感神経系を通って末梢の器官まで伝わる経路を遮断する.
この二つのメカニズムの組み合わせで交感神経系を抑えるのである.
 硬膜外麻酔の利点はこの他に術後の鎮痛に応用するという重要な意味もあるが,なによりも術中の交感神経系の刺激と反応を抑え,これによって副作用の懸念される全身麻酔薬や筋弛緩薬の使用量を少なく保つのが目的であり,利点なのである.
 硬膜外麻酔で麻酔された患者は,通常の全身麻酔を受けた患者よりも術後が安定している.その理由は全身麻酔では交感神経系の抑制が充分でないので体力が消耗するのである.いわば手術の間,マラソンを走っていたようなものといったら分りやすいだろうか.一方で,薬の副作用で栄養の補給などは低下した状態に抑えられたままである.これに対して硬膜外麻酔で交感神経を抑制した状況は静かに眠っている状態に近いのである.どちらが回復が速いかは比較する必要もないくらい明らかである.
 下に挙げた論文は,大手術を全身麻酔単独で施行した群と硬膜外麻酔併用群で比較して,後者の優位性を示したもの.

[文献]
Yeager MP, Glass DD, Neff RK, Brinck-Johnsen T. Epidural anesthesia and analgesia in high-rist surgical patients. Anesthesiology 66:729-736,1987.



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諏訪邦夫

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