全身麻酔併用の硬膜外麻酔の麻酔域は瞳孔径でわかる
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全身麻酔を併用した硬膜外麻酔の麻酔域が電気刺激による瞳孔径の変化でわかるかどうかを検討する.
[使用機器] 電気刺激装置とポータブル瞳孔径測定器
[方法] ボランティアを対象とした研究と手術室での臨床研究の組み合わせである.
硬膜外カテーテルを留置後2%クロロプロカインを投与し,初回量は15〜20mlを,維持量として13〜18ml/時間を使用した.
麻酔維持は,酸素と1.2%イソフルレン.PETCO2は35mmHgに維持.4連モニター下でベクロニウムを持続投与. 電気刺激はL5 領域から開始し,頭側に移行した.ヘソから乳頭の間は距離を6等分して刺激した.乳頭周囲から上は,頚神経の支配も受けるので,Th3はテストせず,Th2は上肢内側でテストした.瞳孔径と対光反射は,刺激後最低15秒間観察し,無反応なら1つ上の分節を刺激した. 瞳孔径が最初の2倍になった最初の分節を知覚遮断域とした.測定は一側一回とした.終了後,筋弛緩をリバースし抜管した.覚醒後,瞳孔径を測定していない麻酔医が痛 覚遮断域を検査した.痛覚遮断域は,ピン刺激による痛みを知覚した最初の分節とした.検査終了後,硬膜外持続注入を中止した.
[結果] 電気刺激を頭側に移動すると,急激に散瞳した.この点が麻酔された領域と判定した.麻酔域より少し尾側を刺激しても瞳孔はほとんど変化がなかった.実際の麻酔域は,Th6〜L5平均Th12(Th2〜Th11平均Th6).実際の麻酔域はVSでは,常に予測麻酔域から2分節以内にあった.
[結論] 硬膜外併用全身麻酔中の知覚遮断域は,電気刺激で瞳孔径変化をみることで2分節から4分節以内の精度で判定できる.本法は,日常臨床に応用可能で,精度も十分である. Larson MD, Sessler DI, Ozaki M, McGuire J,Schroeder M. Pupillary assessment of sensory block level during combined epidural/general anesthesia. Anesthesiology 79(1):42-48. 1993.
[コメント] 本抄録は,岩瀬良範先生(獨協医科大学)が作成したものに諏訪が少し手を入れた. 麻酔領域を電気刺激するので,手術前には使えるが手術が始まると使える可能性は乏しいのが残念である.
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諏訪邦夫
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