腕神経叢ブロック(斜角筋間アプローチ)
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腕神経叢が前斜角筋と中斜角筋の間からでてくる,という単純な事実から,ここへ薬を注入する.
刺入点: 輪状軟骨と胸鎖乳突筋の後縁の交点 この交点を,前後に動かすと,斜角筋間溝が良くわかる. 頭を上げさせる,とくに頭を抑えて力に抗させると,この溝が良くわかる. 鼻をつまんで,“クンクンさせる”と,全中両斜角筋が収縮弛緩を繰り返すので分りやすい.
刺入の方向: 前額面に対して少し後ろへ向かう.体軸に対して少し尾側へ向かう.
Paresthesia のうったえ 放散するParesthesia かないまま注入すると,有効の可能性は高くない. Paresthesia の放散部位は肩か上腕に向かえば充分という考え方と,親指にいくべきだ,という主張とがある. 前者でも鞘の中にあることは確実なので,局所麻酔薬の量を多く使えば必ず効く.しかし,なるべく少量で効かせるためには,下の方に Paresthesia が出た方が確実である.
薬物の量: 沢山必要.1%メピバカイン30ml 長時間効かせたければ,0.5%ブピバカインを使用する.
蛇足: 上肢の手術を全身麻酔で行なっている時に,麻酔下で施行してみるとよい.もちろん Paresthesia は得られないが,全身麻酔薬の使用量から効果がわかる.こうして慣れておくと,単独にも使える.このブロックは簡単なのでこうしたやり方が容易である.もちろん,それなりの危険は避けられないが. Raj PP. Handbook of Regional Anesthesia. Churchill Livingstone, New York. 1985.
他の方々と異なり,筆者は腋窩ブロックが下手で,こちらを得意にしている.
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諏訪邦夫
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