ナロキソン
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化学: オピエイトの構造.平面でみるとあまり似ているとはみえないが,立体構造は大変に近似しているらしい.
薬理学と作用:オピエイトの作用に選択的特異的に拮抗する. 鎮痛作用も呼吸抑制作用も拮抗する. 針麻酔などにも一部拮抗する.これが,針麻酔が内因性オピエイトの作用であることの傍証の一つである. この他に,心拍数や血圧を高める作用がある.敗血症ショックや失血性ショックの治療にも有効との報告もある.一時もてはやされたが,現在ではこの面の評価はさして高くはないようである.
ファーマコキネティクス: 作用は30分程度と短い. オピエイトアゴニストが長時間持続する状況での使用には注意を要する.拮抗薬のナロキソンの作用は消失して,もとのアゴニストだけが残存する可能性がある.報告もある. 具体的には,作用時間の長いオピエイトを使用した場合,またみかけの作用時間は短くても,潜在的な作用が長いばあいなどに,こうした危険がある.たとえば,フェンタニルは長時間にわたって反復使用すると,血中濃度の低下速度が非常ののろくなることが知られている.
使用法と状況: オピエイトによる呼吸抑制の治療 0.1〜0.2mgをゆっくり静脈注射 麻薬以外の呼吸抑制には無効である.
副作用: 血圧上昇,頻脈,それによる心疾患の顕在化 PVC,狭心症と心筋梗塞,肺水腫
注意: 上記のような作用の特徴や副作用があるので,適応も使用も厳重に注意すること.分割して投与してもそれなりに効果はあるので,心臓疾患患者などでは一度に大量を避けて少量ずつ反復投与する.
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諏訪邦夫
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