電子版麻酔学教科書

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  入麻酔薬の圧拮抗現象 #8
投稿者  諏訪邦夫
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投稿日時  2001年02月09日 18時59分
吸入麻酔薬の圧拮抗現象

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概念:
吸入麻酔した状況で,環境圧を極端に上昇させると,麻酔から覚醒する現象が見られる.

対象:
この現象を観察するには少なくとも数十気圧程度の高い圧が必要なので,水生動物での実験の方が容易である.おたまじゃくしを使用した実験が多い.もっとも,現象そのものは哺乳動物でも観察されている.

説明:
吸入麻酔のメカニズムとしては,吸入麻酔薬が脳細胞の膜の脂質二重層に入り込んで側圧をまし,これがイオンチャンネル蛋白の活動に影響を与えて,麻酔状態を誘導すると考えられている.
 吸入麻酔薬は脂質二重層に入り込んで,膜構造に歪みを与える.高圧を加えると脂質二重層に入り込んだ吸入麻酔薬との物理化学的結合に異常が生じ,吸入麻酔薬分子が脂質二重層から除去されてしまう.これが圧拮抗現象である.

他の麻酔薬:
圧拮抗現象は静脈麻酔薬でも報告があるが,吸入麻酔薬ほど明確ではないという.
この「圧拮抗現象」がみられることが,逆に吸入麻酔薬の作用のメカニズムに説明にも使われている.


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諏訪邦夫

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