アイソフルレンとは イソフルレン,イソフルラン isoflurane --------------------------------------------------------------------------------
歴史: 1970年代はじめに臨床治験が行なわれ,麻酔薬としての有効性は確立した.しかし,発癌性が疑われて正規の認可にいたらず使用が中断した.1980年頃から諸外国で優秀な性質をもつことが報告された.日本では1990年頃より使用.急激に普及している.
物理と化学: 化学構造はCF3CHClOCF2Hというエーテル構造で,エンフルレンの同素体である.常温では液体で,飽和蒸気圧は約1/3気圧
MAC: MACは約1.1%で,ハロセンより少し弱く,エンフルレンやセヴォフルレンよりはずっと強い.
使用法: 通常は笑気67%にアイソフルレン0.3〜2%を加える.
利点: 導入,覚醒が迅速だが,ハロセンには及ばない. 筋弛緩が強い. カテコールアミンとの併用は,ハロセンよりずっと安全 イソフルレンの最大の利点は,化学的な安定性にある.従って肝障害の報告もない.その他の臓器毒性も低い. 循環系への抑制が少なく,血圧も心拍数もむしろ増加する.交感神経を刺激することによるらしい.
欠点: 反射の抑制力はハロセンにおとる. 呼吸の抑制はつよい.自発呼吸での維持はむずかしい. 頻脈を起こす. 導入は気道刺激性が強く,スムーズでない.小児で吸入麻酔で導入することは不可能ではないが,むずかしい.
蛇足: 日本の正規の名前はイソフルラン.薬物の仮名書きを規定したルールがあり,基本的にドイツ語読みに近い.
キーワード:交感神経を刺激する麻酔薬,
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諏訪邦夫
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