セボフルレン
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歴史: 化学薬品としては米国で開発されたが,日本で製造され日本が中心となって臨床治験が施行された.日本では1990年頃より使用.急激に普及している.アメリカでも実際の使用は急速に増加しているが,論文はすでに日本の方々が沢山書いてしまっているので,代表的な雑誌への報告は比較的少ない.
物理と化学: 化学構造は(CF3)2CHOCHF2で,やはりエーテルである.常温では液体で蒸気圧は約1/3気圧 .優秀な性質をもつ弗素化合物の吸入麻酔薬である.
MAC: MACは約1.7%で,ハロセンより弱い.
特徴: 特徴は迅速な導入にある.血液/ガス分配係数が0.6程度で,笑気やサイクロプロペンのそれにほぼ等しい.しかも作用は笑気よりもはるかに強力であり,気道刺激性は乏しいのでスムーズに麻酔状態に入る. 日本におけるデータは臨床症例も研究も蓄積している.諸外国の動向,今後どうなるかは不明な要素も残っているが,どうやら確立普及しそうである. 一つには,デスフルレンに予想外の欠点(その項目参照)が判明して,高速の吸入麻酔薬としては唯一の薬物の故もあろう.
使用法:
利点: 導入,覚醒がきわめて迅速. カテコールアミンとの併用はハロセンより安全
欠点: 高価(単位量あたりの価格はアイソフルレンと同じだが,力価が弱いので大量に必要) 化学的に不安定で代謝量が多い.またソーダライムとの反応がある疑いも残っている.しかし,明らかな臓器毒性は知られていない. 実際的な欠点:日本で使用されている気化器は最高濃度が5%であり,これはMACの2%強に過ぎない.したがって,薬物の潜在的な導入速度は高速なのにもかかわらず,実際の導入速度は期待ほどには速くない.
蛇足: 導入に使って,後は他の薬物に切り換えるのが無難か?
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諏訪邦夫
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