緩速導入の秘訣
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笑気+ハロセンを使用した緩速導入(slow induction)をうまく行う秘訣を説明する.
十分に酸素化(マスクをしっかりとあてて,10L/分で少なくとも2分間) 笑気8L/酸素2Lとする(純笑気を1分間だけ与えてもよい) 2分後にハロセンを0.2%にする. 以後は4呼吸毎にハロセンを0.2%ずつ増す.気道が確実にひらいていることと,マスクが正確に密着していることに注意. ハロセンが3%に達したら,笑気の流量を1L/分ずつ下げる.一度に下げてはだめ. ハロセン4%で笑気を零としてハロセン/酸素. 筋弛緩薬を用いるなら,ここで投与して挿管.用いないなら,ここで人工呼吸として麻酔をさらに深くする (濃度は4%のままでも,人工呼吸は換気量がおおいので麻酔は急速に深くなる. 緩速導入の全経過を通じて,「深呼吸しろ」と命じないこと.自然に呼吸させておく.深呼吸すると意識がなくなると同時に呼吸が弱くなってしまい,逆に麻酔が浅くなってしまうので,なめらかな導入進行が妨げられる. 使い道の大変に広い技術である. 蛇足:
エンフルレンやアイソフルレンも可能だが,むずかしくてこずる可能性がある. エンフルレンは力価が低い.アイソフルレンは気道刺激性. 笑気が66%までしか与えられない麻酔器だと,少しむずかしい.緩徐導入に関しては66%と80%はかなりひらきがある. この他に,4%位の高濃度のハロセンを深吸気させてから呼気を止めさせて一気に導入する方法もある. Wilton NCT, Thomas VL. Single breath induction of anesthesia, using a vital capacity breath of halothane, N2O and oxygen. Anaesthesia 41:472-476.1986. セヴォフルレンを使用すればずっとやさしい.たいして技術もいらない.“古い技術が,新しいテクノロジーで役にたたなくなる例”といえようか? でも,簡単すぎて面白くない!進歩が世の中をつまらなくする1例ともいえるか. キーワード:酸素化,笑気濃度,ハロセン濃度,笑気流量,緩速導入
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諏訪邦夫
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