低血圧麻酔
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概念: 麻酔において出血を防せぎ手術がやりやすいように,低血圧を起しながら麻酔する方法.
対象: 小さな皮膚の形成から,頭蓋内髄膜腫・心臓や肺の手術まで.
基本のやり方: 1つの方法に頼らない.いろいろな手段を組み合わせた方が,コントロールしやすい.特に,吸入麻酔薬を組み合わせると,コントロールしやすい.
使用薬 ヘキサメトニウム(メトブロミン)−2.5mg/mlに希釈して1mlずつ 最近製造が中止になって入手がむずかしい. トリメタファン(アルフォナ−ド)−1mg/mlに希釈して点滴 ニトログリセリン−0.05mg/mlに希釈して点滴 経皮投与を組み合わせてもよい. ニトロプルシッド:日本では入手困難 プロスタグランディンE:高価(だから使うのかも) カルシウムチャンネルブロッカー:例,ニカルジピン
他の手段:上記と組み合わせる. 吸入麻酔を深くする:単独では有効性は低いが,他の方法と組み合わせれば有効.特に,速いコントロールが可能な点で有用. 体位:頭を挙げる.やはり単独ではなくて他の方法と組み合わせて有効.
補助薬: 1)低血圧にしようとすると頻脈が起こりやすい.その頻脈を抑えるのに使う. リドカイン:たとえば20mgずつボラス ネオスティグミン:たとえば0.2mgずつボラス プロプラノロル(インデラル):これは要注意.0.1mgずつボラスで. 2)筋弛緩薬: 薬物は何でもいいが,血圧コントロールの幅を広げるには,筋弛緩薬を使用して,麻酔が万一浅くなっても手術が進行できるように対応しておくこともできる.患者が丈夫で,高濃度の吸入麻酔薬を投与できれば,“必要”ではない. 3)輸液: うすいものをごく少量使う.血圧を上げる時点になったら,乳酸加リンゲル液を大量に投与する. 低血圧の度合いと指標:決定版はない.対象とする患者群,手術の種類と安全度などによっても異なる.
モニタ−: 血圧測定: 耳で聞く通常の方法は不可(聞えなくなる). 振動法か,直接測定法を採用する. 記録が可能なら更に好都合. 直接法推奨 EKGモニタ−は必ず使用. 尿量をチェックすること. 以前は,“酸素濃度を50%”としたが,パルスオキシメーターで酸素飽和度が98%程度あれば十分であろう.
重要: 低血圧麻酔は保険で麻酔料の加算がある.忘れないように.
蛇足: 低血圧麻酔を「血圧測定と薬物投与」の組み合わせで,コンピュータなどで自動的に施行する“試み”は無数に報告されている.しかし,それを多数の症例で施行して,実際に手動よりも優秀だったとか,制御の度合いを測定考察した研究はみあたらない. キーワード:メトブロミン,アルフォナード,ニトログリセリン,血圧測定,酸素濃度,
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諏訪邦夫
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