挿管は悠然と行なう
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何十年か前の導入法と比較すると,現代の麻酔法は挿管手順がいろいろと変っているのに,昔のままの方法が残っている部分がある.
その一つが,挿管にちょっとてこずると,あわてて喉頭鏡を抜いて,マスクにもどる点である.
[行なうべきこと] 挿管がちょっとむずかしくても,あわてて喉頭鏡を抜いて,マスクで換気して,あらためて喉頭鏡を入れ直す,という操作は必要ない. 喉頭鏡は抜かずに,もっと,時間をかけて,喉頭鏡の位置を換えたり,頚の形を換えたり,気管内チュ−ブにスタイレットを入れ直す余裕がある.
[余裕のある時間] 導入前の酸素化(いわゆる“ Preoxygenation ”)をしっかり施行しておけば,少なくとも5分程度,平均7分から8分は安全!
[パルスオキシメーター] しかも,パルスオキシメーターをつけておけば,安全時間は統計でなくて個々の患者,個々の状況でわかる.
[なるべく一回で挿管すべき理由] 喉頭鏡を抜いてマスクでパカパカやって,あらためて喉頭鏡をかけなおすのは障害が大きいので,なるべく避けるべきである. 喉頭鏡を挿入する刺激 麻酔薬や筋弛緩薬がきれる 気道内分泌物が増加して,吸引が必要になる頻度が高い 胃にガスの入る可能性が増加する
[蛇足] 昔は導入前の酸素化“ Preoxygenation ”の施行があまかった.もちろん,パルスオキシメーターはなかった.だから,ハイポキシアをもっと恐れる必要があったのである.
[文献] Gambee AM et al A&A 66:468.1988.
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諏訪邦夫
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