気管内挿管のコツ
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気管内挿管のコツをいくつか.
ラボナールを与える前から十分に酸素を吸入させ,挿管を余裕を以て行う. 頭の下に枕を入れて所謂「花の香りをかぐような:sniffing 」くびの形にする. 口から声門を経て気管上部までが,なるべく直線になる体位. 気管内チューブの弯曲を一様にしない. 先端部分の弯曲を強くする.中央部のみが曲がって両端が真っ直ぐな気管内チュ−ブはスタイレットで先端に弯曲をつけなおさないと挿管不能. ちなみに,体内での気管内チューブの形と,挿管しやすい気管内チュ−ブの形は違うので,身体に入って気管を損傷しない形の気管内チュ−ブにはスタイレットが必要な理屈である. 気管内挿管の時にチューブを正面からもっていかない.視野を遮断してしまい,気管内チュ−ブが声門を通過していくのが見えない. チューブは右の口角から横向きに入れていき,先端が食道に近付いたら逆時計方向に回転して,先端を声門にもっていく. 気管内挿管練習用の人形で練習するのはとても有効. 経鼻の場合は特にそうだが,経口挿管でも気管内チュ−ブ先端は気管前壁につっかえる場合も多い.先端が確実に気管に入ったらスタイレットを少し戻し,頚部の後屈を除去する. むずかしそうなら,さっさとファイバーを使用しよう! 蛇足:麻酔のトレーニングをはじめたばかりの人には,「花の香りをかぐような:sniffing 」体位の意義がわかりにくいようである.頚を伸展しないで,前に出すだけのこの体位にはいくつかの意味がある.
伸展してしまうと下顎附近の組織の張力が高くなってしまって,口を開きにくい. 伸展してしまうと,気管内チュ−ブの挿入の方向と気管の方向が一致せず,気管内チュ−ブが気管前壁をつっついて進みにくい. マッキントッシュ喉頭鏡を使用する限り,伸展位ではみにくい.少なくとも伸展位にすることの意義はない.
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諏訪邦夫
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