麻酔の安全基準
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麻酔中の安全基準としては,現在欧米諸国で次の基準が採用されている.元来ハーバード大学系の9つの病院の麻酔科が合同で作成したものである.
麻酔中は常時麻酔医がその場に存在:これが必ずトップに挙げられる重要なポイントである. 血圧と脈拍を5分以内毎にチェック 心電図:常時 呼吸と循環の連続モニタ−:“連続”というのがミソ 呼吸:バッグの動き,気流,気道内炭酸ガス 循環:心音,動脈波形,プレティスモグラフなど 回路の接続アラーム 回路の酸素濃度 体温のチェック ハーバードの基準では,パルスオキシメーターと気道内二酸化炭素モニタ−は含まれていない.しかし,それはこの基準が1984年頃に検討されたからである.すでに,付録としてパルスオキシメーターのことは述べられている. 現在では,パルスオキシメーターと気道内二酸化炭素モニタ−は実質的な基準である. 国によって,またアメリカでは州によって,明確な基準に入れている地域もある. 日本麻酔学会も,1995年に類似の基準を作成した.
この基準でいってみとめられない例:
脊椎麻酔にプラスティックのマスクで酸素を与えている例 理由:呼吸を連続的に捉えていない(注:心音は連続モニタ−として認められるが,呼吸音は認められない). 全身麻酔中で,血圧の間欠測定はしているが,連続モニタ−は心電図のみ. 理由:心電図は“必要”だが,循環の連続モニタ−として“十分”ではない.電気活動と機械的な活動は別. 一人で二つの麻酔を同時に担当 担当麻酔医は当該患者の麻酔“だけ”を担当している,という原則 文献: Eichhorn JH, Cooper JB, Cullen DJ, Maier WR, Philip JH, Seeman RG. Standards for patient monitoring during anesthesia at Harvard Medical School.JAMA 256:1017-1020.1986.
我田引水だけれど 諏訪邦夫,菅井直介(編):麻酔の教育と安全 克誠堂,東京 1990. 1989年,第9回日本臨床麻酔学会総会のうちから上記テーマの講演を翻訳記録したもの.
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諏訪邦夫
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