昔の筋弛緩薬:クラーレ,メトュバイン,ガラミン,ディアルフェリン,サクシニルコリン,シンキュリン
--------------------------------------------------------------------------------
ここに挙げた名前はすべて筋弛緩薬ですが,現在ではほとんど使われないでしょう.
クラーレ:dトボクラリン 作用時間は40分位.いわずと知れた筋弛緩薬の代表です.1998年の時点で,一部の大学や病院ではまだ現役として使っているでしょう.価格が安いのは利点ですが,ヒスタミン遊離作用がしっかりあり,この点だけは注意して使うべきです. この薬物を使って気管内挿管することは,私自身はほとんど経験がありませんが,もちろん可能です.
ジメチルトボクラリン(商品名:メトュビン) 作用時間は30〜40分位で,クラーレよりほんのわずかに短い感じ.クラーレのヒスタミン作用が弱いので,外国ではもてはやす人もいます.私自身は東京大学で使った記憶があり,さらに1984年にコロンビア大学で働いた折りにはよく使いました.日本では商品にはならなかったと記憶しています.
ガラミン(商品名:フラクセディル) 作用時間は20分位.1963年〜1966年のMGHでのレジデント時代にはときどき使いました.さらに日本に戻って,1960年代の終盤に東京大学医学部附属病院で治験をするので大量に使いましたが,一般使用には至らなかったか使われたとしても寿命は短かったようです.頻脈を起こし,その程度はパンクロニウムよりずっと強いものです.
アロフェリンまたはアルクロニウム(商品名:ディアルフェリン) 作用時間は30分位.1960年代の終盤にこちらは一般使用されました.作用時間が中途半端なのと,持続が不安定なこと,時々リバースがむずかしかったことなどで,パンクロニウムの出現とともに捨てられました.
サクシニルコリン(スキサメソニウム:商品名サクシン) 作用時間は7分位.これはもちろん現役に近いので,ご存知の方が多いでしょうが,悪性高熱との関係で急速に消滅に向かっています.
デカメソニウム(商品名:シンキュリン) 作用時間は30分位.脱分極型筋弛緩薬として最初にみつかったもので,薬理学の教科書や一寸古い麻酔学の教科書には書いてありましたが,私はMGHにあったものを二回ほど使ってみただけです.日本では,一般使用はもちろん,大規模な治験も行われなかったでしょう. サクシニルコリンは特許が切れていたこと,偽コリンエステラ−ゼで分解されることなどの利点があったので,デカメソニウムを使う意義は乏しかったのでしょう.
--------------------------------------------------------------------------------
諏訪邦夫
| |