2時間で11のヘルニア:クープ氏
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小児外科医は手術の速い人が少なくありませんが,私が付き合ったことのある小児外科医では,フィラデルフィア小児病院のクープ氏( Everett Coop )が非常に速かった一人に属します.ただし,「上手だった」という印象は受けていません.
極端な例を憶えています.どこか他の町で用事があって飛行機に乗らねばならず,朝の8時から10時までの間に小児のヘルニアを11例,こなすことになりました.
私ともう一人のレジデントとが,二つの部屋で麻酔を担当し,交互に麻酔してはクープ氏は二つの部屋を往復しました.外回りは,ダウンズ氏でした.
無事予定とおり2時間以内に手術を終了して,いつも傲慢なクープ氏が,この日は「ジャック,協力を有難う」と述べていたのを記憶しています.
それは1965年のことですが,それから20年以上もたった1988年の世界麻酔学会総会で,このクープ氏がエイズ撲滅のキャンペーン演説をしました.Surgeons General(軍医総監)というような立場になっていたようです.
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諏訪邦夫
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