へそを作り過ぎた話
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「ヘソを作り過ぎた」という話をします.これも,フィラデルフィア小児病院でのことです.ここには,小児泌尿器科医師のMichie 氏という人がいました.よく喋りながら手術をするので,にぎやかで楽しい人でした.
ある時,再発を繰り返している2歳か3歳の患者で,尿管の植え換え手術を行いました.苦労して何とか手術が終わりに近づいて「そうそう,この患者は手術を繰り返しているうちにヘソがなくなってしまったんだ.ヘソをつくってやろう」と宣言しました.ヘソは“belly button ”いいます.“He needs a good belly button. ”とかいいながら,閉腹した後のキズの部分に処置を加えて,念入りにヘソを作りました.その時点では,手術の人達も,麻酔医の私も,介助のナースも彼のいうことを疑いませんでした.
さて手術が完了して,ヤーッとばかりに布をはずしてびっくりしました.ヘソはちゃんとあったのです.「あーれ,おかしいな」とか言いましたが,おそらく別の患者と間違えたのでしょう.とにかく,「ミッチー氏のヘソ作り過ぎ事件」としてしばらく手術室で語られましたが,彼の人徳の故か「軽べつ」のニュアンスはほとんどなかったように感じました.
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諏訪邦夫
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