麻酔試験問題 1990年度
--------------------------------------------------------------------------------
1990年度,東京大学医学部医学科の卒業試験麻酔学問題の再録です.私が作成したものです.
神経細胞同士および神経細胞と効果器官との接続は,“伝達物質”によっています.これに関して次の質問に簡単に答えて下さい.(25点)
麻酔学および麻酔に関係している現象(広く解釈して良い)で,伝達物質の存在が判明しているものの例を挙げて説明して下さい.(10点)
接続が“電気的な接続”でなくて,“物質が介在している”からこそ使用できる薬物の例を挙げて説明して下さい(5点).
現時点で“伝達物質”のとらえられていない生理現象ないし疾患で,君が“こういう物質が介在して起こるのではないか”,“したがってこういう物質を開発すれば治療できるのではないか”という疾患の例を挙げて説明を試みて下さい.自由に想像をめぐらしてよろしい(10点).
次の組み合わせで大小を比較して,その大小の医学的意義を簡単に考察して下さい.数値もわかれば加えて下さい. 下にある問題のうちで,5題正解すれば満点です.しかし,もっと多く答えても結構です(たくさん答えてあると,努力点をあげます).(25点) 例:サイオペンタルの使用量とフェンタニルの使用量(等しい麻酔レベルで). 答:前者は4mg/kg,後者は5μg/kg程度で,後者の方が力価が高い.前者には明確な受容体がなく細胞膜全体に効くのであろうが,後者にははっきりした受容体があるので少量で有効である.
dTcの作用時間とサクシニルコリンの作用時間 脊椎麻酔や硬膜外麻酔での知覚麻痺のレベルと運動麻痺のレベル 硬膜外麻酔に使用する局所麻酔薬の濃度:術中と術後 挿管の困難さ:下顎の小さい人(昭和天皇型)と大きい人(アントニオ猪木型) 右主気管支と左主気管支とが矢状面に対してなす角度 妊婦のP50と胎児のP50(“P50”は酸素解離曲線の位置を表す指標.大きい方が酸素解離曲線が右にある.) 血液のヘモグロビン量:平地と高地 声門の広さ:吸気と呼気 肺動脈圧と大動脈圧 ハロセン麻酔下の血圧とケタミン麻酔下の血圧 全身麻酔中の常用酸素濃度と空気中の酸素濃度 心拍数50%変化を目標としたED50:アセチルコリンとアドレナリン
--------------------------------------------------------------------------------
諏訪邦夫
| |