全身状態評価とASA分類
-------------------------------------------------------------------------------- 患者の全身状態の評価にはASA分類を使用する.これは複雑な患者の状態を,5つのランクに分けて無理に一本の軸にならべるためのスケールである. 当然欠点もあるが,麻酔医間,医師間での共通の尺度となるので有用性は高い. 心疾患患者のNYHA分類と考えかたも実際も類似している.実は,ASA分類は,NYHA分類を手本にして作られたものである.“ASA”とは「アメリカ麻酔学会」のこと.( American Society of Anesthesiologists ) この分類は「手術との兼ねあい」という尺度は入っていない.「患者の状態はよくないのだが手術が小さいから『リスクはよい』と評価しよう」という風には考えない. ただ患者の「全身状態」のみを分類する. 実際の評価法は表を参照のこと. 表 全身状態評価とASA分類
1度 手術対象となる疾患以外に,全身的に疾患がない.手術対象の疾患は局所的で, 全身障害を起こさない. 2度 軽度ないし中等度の全身疾患を有する. 3度 重篤の全身疾患を有する. 4度 重篤な全身疾患を有して,生命の危険な状態. 5度 死にかかった”状態で,生存の可能性はほとんどないが一か八かの手術を受ける.
全身評価ではないが,患者の体型・口の開き方・肥満度・脊柱の触診などは挿管の難易や麻酔のプラン,脊麻・硬麻の可能性などに関係するので調べておくこと. キーワード:共通の尺度,NYHA分類,リスク
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諏訪邦夫
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