術前の心臓と合併症発生の頻度予測:心臓手術
-------------------------------------------------------------------------------- 術前の心臓の状態から,周術期における心筋梗塞の発生頻度を予測しようという努力がいろいろある. この項目はそのやり方の一つで,対象は心臓手術というか,CABG. データと解析は有名なクリーブランドクリニックで,5千例を対象 心疾患患者が手術をうけるときにどの要因に着目して,周術期の状態を予測し,あらかじめどう対応すべきか
1) 緊急手術 4 点 2) クレアチニン>1.9 4 点 3) 左室不全 3 点 4) 再手術 3 点 5) 僧帽弁閉鎖不全の合併 3 点 6) 75歳以上 2 点 7) 血管手術の既往 2 点 8) 慢性閉塞性肺疾患 2 点 9) 貧血<ヘマトクリット34%以下 2 点
この他に,クレアチニン>1.6,大動脈弁狭窄,糖尿病,脳血管障害などが各 1 点 以上を累計して死亡率は 0点 0.24% 1点 0.8 % 5点 5.2 % 7〜9 7.3 % 10点以上 26.5 %
などとなる. なお,麻酔医8人,外科医4人も調べたが,差はなかった.各々一人500例〜1000例以上の経験者が対象である.下手な麻酔医や下手な外科医はこれまでに淘汰されてしまっているのだろう.外科医のデータだけが載っているが,死亡率は総じて1.5〜2%程度である.
文献:Higgins TL, Estafanous FG, Loop FD, Beck GJ, Blum JM, Paranandi L. Stratification of morbidity and mortality outcome by preoperative risk factors in coronary artery bypass patients. JAMA 267:2344-48. 1992. Loop FD, Higgins TL, Panda R, Pearce G, Estafanous FG. Myocardial protection during cardiac operations. Decreased morbidity and lower cost with blood cardioplegia and coronary sinus perfusion. J Thoracic Cardiovasc Surg 104:608-18. 1992.
上記の基準を使用して,晶質液と血液で比較して,血液の場合の方が術後合併症が少なく費用もかからなかったとしている.長期生存は差がない.
蛇足:Higgins の解析は Goldman の解析に似ている.もちろん,対象がCABGのところは非常に異なるが.この種の提示法は手で計算する場合は使いやすいが,コンピュ−タプログラムにするのはけっこう面倒である.元のデータを上記のように重みをつけていくプロセスも必ずしも明確ではない.
それになんといっても,Shah のものと比較すると,特定病院にしかあたはまらない条件が強いであろう.
それにしても,1施設で5千例は大変なものである.4年間の症例だから,年間1200例ということになる.
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諏訪邦夫
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