高酸素による肺損傷のマーカーと薬物による修飾
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[目的] 高酸素による肺損傷を研究し,障害の指標(マーカー)を探す.さらに薬物でどう影響を受けるかを検索した.
[使用薬物と機器] 高濃度酸素環境に暴露して,事後に肺を検定する実験である.
[対象]ラット
[方法] 暴露時間は対象となるパラメ−タ−によって異なる.0時間〜60時間の各種.さらに,各種アンティオキシダント(下記)を投与. 測定パラメーターは 肺のホモジェネートで,ミトコンドリアの酸素摂取測定. さらに,ミトコンドリアを純粋に抽出して酸素摂取を測定. 肺胞洗滌液のハイドロキシプロリンを測定.
[結果] 化学変化を三つ検索したが,その中の一つ(上の2番目)がラットでは優秀なマーカーであることが証明できた. 肺のホモジェネートで,ミトコンドリアの酸素摂取を測定すると,障害発現には酸素暴露24時間を要する. ミトコンドリアを純粋に抽出して酸素摂取を測定すると,酸素暴露わずか3時間後で障害が検出できる.これまでの報告も総合して,これがラットでは最短である. 肺胞洗滌液のハイドロキシプロリンは漸増の傾向は見られたが,個体差が大きくて明確な変化は検出できなかった. アンチオキシダントとして,N-アセチルしシステイン,ディメチルサルフォキサイド,アロプリノルはいずれもこの肺損傷を和らげる効果がある.
[結論] ラットを高濃度酸素に暴露したときの死亡は肺損傷による.アンチオキシダント使用で治療できる可能性を示唆する.
An early marker of hyperoxic lung injury in the rat and its pharmacological modulation. O'Connell MJ, Snape SD, Nunn JF. BR J ANAESTH 66(6): 697-702. 1991.
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諏訪邦夫
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