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  閉塞性睡眠時無呼吸症候群の上気道MRI像と鼻CPAPの効果 #8
投稿者  諏訪邦夫
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投稿日時  2001年02月10日 23時48分
閉塞性睡眠時無呼吸症候群の上気道MRI像と鼻CPAPの効果

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[目的]
閉塞性睡眠時無呼吸症候群の上気道の様子をMRI像で解析する.
この手法で鼻CPAPの効果を検討する.

[背景]
最近,上部気道の解析にMRIが使えるようになった.特に,組織水分量の多い部分を解析するのに好適である.一方,閉塞性睡眠時無呼吸症候群の治療法として鼻CPAPが開発されて,機能的な有用性が確立しているが,形態への効果を検討したい.

[研究の場]臨床検査室

[対象]閉塞性睡眠時無呼吸症候群患者5例.いずれも男性.

[使用機器]MRI,とくにスピンエコーパルスシークエンス法を利用した.

[測定項目]形態変化と粘膜の水分含有量.

[方法]
MRIスキャンを施行する時点では,鼻CPAPは使っていない.CPAPを適用する前後でMRIを施行して,体軸面像と矢状面像とを撮影し,特に,上部気道・舌・軟口蓋などを精査した.治療前と鼻CPAP適用後5週間での像とを比較解析した.

[解析]
コンピュータグラフィックスの像から,対象の断面積や容積を計算した.上気道の水分含量は,主観的にグレードをつけて評価した.

[結果]
鼻CPAPで,咽頭容積と断面積は増加した.とくに,呼吸相で最小になるときの値が増加した (p < 0.05).また舌の体積も有意に減少した (p < 0.01).
咽頭容積が増加したが,主に口腔咽頭の増加であって,鼻咽頭は変化がなかった.
気道粘膜水分量が減少したのも,主に口腔咽頭である.

[結論]
閉塞性睡眠時無呼吸症候群患者に鼻CPAPを行うと,上気道の形態が変化する.この変化は,粘膜の水分量の減少に基づくものであろう.MRIは閉塞性睡眠時無呼吸症候群患者の上気道の形態の評価に有効である.

[コメント]
単純に圧によって広くなるというのでなくて,粘膜の水分量の減少で上気道の形態が変化するらしいことを,MRIで確認していることが面白い.

文献:
Magnetic resonance imaging of the upper airway in obstructive sleep apnea before and after chronic nasal continuous positive airway pressure therapy Ryan CF, Lowe AA, Li D, Fleetham JA AM REV RESPIR DIS. 1991,144:939-944.


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諏訪邦夫

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