コロンビア大学プレスビテリアン病院の情報システム
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[背景] アメリカの主要医科大学や主要病院は,情報システムの構築に積極的なところが多い.コロンビア大学もその一つである.連邦政府の大学情報システムの一環として構成されている. 1992年6月にこの大学で数日間を過ごした.その時点で,コロンビア大学プレスビテリアン病院には,大変に面白いテキストができていた.それを中心に,病院の情報システムのうちで医師ないし医学生の立場から有用で,現在の日本では実現していない,あるいは一応は実現していても使えない部分を紹介する.病院の情報システム自体は比較的標準的で, ネットワークとE−mail,病院内外の電子メール スーパーコンピュータ,統計,DTP メドライン,電子テキスト Decision Making(内容不明), 知識データベースなどである. 以上の機能を全部利用するには強力な端末が必要で,通常は使用できないものも多い.端末のハード性能と,特定の機能への登録が必要だからである.
[パソコンの機種依存性の問題] 端末はIBM互換機が標準だが,マッキントッシュやUnixマシーンもつながっている.基本的には機種依存性を排除している.“多機種の存在は事実なので,そのサポートは絶対必要条件”という主張している.パソコンやワークステーションを端末にエミュレーションして使用する. 現在の端末数は716. 病院内と大学のネットワーク(イーサーネット規格)は一応完成し,大学側では広く利用されている.病院内ではどこでもというところまでは行っていない印象だった.
[メドライン文献サービス] メドライン文献サービスは,テープを大学のコンピュータにおいてアクセスする契約になっている.しかし,ダウンロードが許されないので不評だった. ダウンロードできない情報なんて”というわけである.
[電子テキスト] 電子テキストが大変に面白い.分量は1テーマ画面2面位.ハイパーテキスト構造で,ハイライトになっているキーワードから別のテーマに跳べる.文献番号からCD−ROMからとった文献も引ける.1992年6月の時点で約3千項目が完成している.それで,20MBの量だとか述べていたが,この点はあまり明確でない.一項目3Kとすると,その3千倍は10Mということになる.これに文献がつけば20Mはいい線か. なお,全体の予定は1万項目位だというが,“結局はもっと多くなるのではないかな”という印象である.たとえば,麻酔関係の項目がとても少ないと感じた.
[費用] ソフトウェアだけで約100万ドルを要している由である.
[結論] お金と時間とエネルギーを投下しただけのことはある!“収益を上げるつもりだが,現時点では外部からの接続が少なくて赤字”とは前学部長の話だった. なお,過去7年間のこの面の仕事は次の論文に記述されている.
[付記] この病院での経験が,この電子版麻酔学教科書作成の大きな要因になっています.
文献: The Integrated academic information management system at Columbia-Presbyterian Medical Center. Hendrickson G, Anderson RK, Clyton PD, Cimino J, Hripcsak GM, Johnson SB, McCormack M, Sengupta S, Shea S, Sideli R, Roderer N. MD Computing 9:35-42. 1992.
抄録者:諏訪邦夫
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諏訪邦夫
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