ヘルニア手術で麻酔覚醒時に糸の切れた症例
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症例: 69歳 M 身長 160 cm 体重 53 kg :この年齢の割にはやや筋肉の発達している男性.
診断: 両側鼠径ヘルニア:約2−3月前に発生.
既往症:高血圧.
手術: 両側鼠径ヘルニア形成術
麻酔: 脊椎麻酔→全身麻酔
9時00分.脊椎麻酔L3-4 0.5 % テトラカイン(バランス10%G/W)2.5ml(12.5mg)を入れる予定 少し漏れた言っている. 麻酔担当医師は経験約1月の外科医師で「10mgは入ったと思う」と 麻酔レベルはやっとT11迄. 9:30手術を開始 右側のヘルニア施行中に患者がいたがって手術続行不能 笑気/エンフルレン麻酔に切りかえて手術を続行 N2Oで導入,エンフルレンを深くし,SCC 40mg を用いて気管内挿管 10:30に手術終了 型通り覚醒を計る 気管内吸引にあわせて強い咳反射 同時に周囲によくきこえる プスッ という音がした. ヘルニアの再発を疑ってもういちど麻酔して,手術創を開いた 右側で糸が2本切れ,他に一本が解けていた.(糸はデキソンの一号). 創傷を閉じて再び麻酔からの覚醒を計った 今度はカフの抜気に一致してプスッ という音が聞えたので 三度麻酔し,三度手術をやりなおした. 今度は右が2本切れ,他に左で組織の断裂によるヘルニア創のタカイが発生していた. 三どめの麻酔にはdTcを投与 筋弛緩薬が或る程度効果の残る時点で抜管してからリバ−ス 手術もさらに丈夫な糸を使用した.
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諏訪邦夫
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