遅発電位(late potential)について
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虚血性心疾患の突然死は心室細動によるものが多いが,心室細動の前駆症状として心室頻拍を認めるものが多い. 心室頻拍のあった患者の心内膜側或は心外膜側より非発作時の洞調律の時にも心室興奮の後に通常の心室興奮より遅れて記録される微少な電位=遅発電位がある. 通常では記録できないが平均加算化心電図法によりこの遅発電位を記録できる. 心室頻拍の内,re-entryによるものがこの遅発電位を生じるらしい. すなわち 興奮伝導 | | 梗塞心筋 ↓ ↓ ↓ ↑ ↓ re-entry ↑ ↓ ↑ ↓→→→→→→↑
上図の様に,re-entryによる遅発電位が心筋の不応期を脱した時に伝わればPVCを生じるし,不応期の最中に伝われば遅発電位として心電図上に(加算すれば)現れる. つまり遅発電位が記録されるということは心筋内にre-entry の回路があることが間接的に証明できる. 心筋梗塞の他,心筋症,不整脈源性右室異形成などの時にも見られる. 加算化心電図で遅発電位を捉えるためには通常の100倍以上の感度をもつ心電図,媛殉除去装置などいるとの事です. 遅発電位の電位は通常μVの単位です. 臨床的データでは心筋梗塞後の患者で,遅発電位がみられた方の14ー20%に突然死が見られ,これに対し遅発電位が見られなかった方は1%台にしか突然死が見られないというのが多くの報告での平均値. まだまだ疑陽性が多く,遅発電位が見られたからといって必ずしも突然死が多いという言い方よりも遅発電位が見られない患者さんに突然死が少ないという言い方の法が適切かも.
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望月吉彦先生
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