内視鏡的胆嚢摘出術1518例の解析
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[目的] 内視鏡的胆嚢摘出術の意義を多施設,多数例で検索する.特に安全性に重点をおいて,手術成績を中心に検討した.
[背景] 内視鏡的胆嚢摘出術が急速に増えている.
[方法] 計画的に(prospectively)症例を検討した.
[結果] 半数が大学病院,半数がプライベートの病院で,各群10施設ずつであった.施設毎の症例数は幅が広く,多いところでは400例もあり,少ないところではたった3例の施設が二つあった. 開腹になったのは72例,4.2%であった. 開腹の理由として一番多いのは,炎症によって解剖がわかりにくくなっていることだった.他に,癒着,装置の不具合,出血,腸管損傷など. 合併症は78例で,合計延べ82回発生した.従来通りの開腹法による胆嚢摘出術の合併症の発生率は6%〜21%と報告されている.内視鏡的胆嚢摘出術も同じである. 合併症で一番多いのは,トロアカール挿入部位の感染であった.手術中の総胆管と肝管の損傷が7例(0.5%)あった.うち4例は単純な損傷で,開腹で簡単に修復できた.一方,この研究症例に先行する症例を各施設で13例ずつあつめると,胆管損傷の率は2.2%とやや高かった.電気メスやレーザーメスに直接起因すると考えられる合併症はなかった. 大学病院とプライベート病院で合併症の発生に差はなかった. 入院時間ないし入院日数は平均値で1.2日で,最短は6時間から最長30日まで分布した. 内視鏡的胆嚢摘出術の普及は,経皮的胆嚢結石破砕術や薬物による融解法などよりも急速に普及しており,アメリカにおいて胆石を処理する方法の第一選択となってきている.しかし,内視鏡的胆嚢摘出術は,傷が小さいとはいえ一応開腹術ではあるから,合併症など問題を軽視してはならない.
[結論] 通常の開腹による胆嚢摘出術と比較した場合,内視鏡的胆嚢摘出術は死亡率・合併症率・入院期間の点で成績がよかった.胆管損傷の率がやや高いが,ほかの合併症の発生率が低い.全体としては,有利といってよかろう.
The Southern Surgeons club. A prospective anlysis of 1518 laparoscopic cholesystectomies. New Eng J Med 1991. 324:1073-8.
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諏訪邦夫
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