二酸化炭素塞栓の高圧酸素治療
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[目的] 腹腔鏡で二酸化炭素塞栓が起ったので,高圧酸素を使用して治療したという症例報告である.
[背景] 別の項目参照.高圧酸素の使用がかわっているが,それさえもだれでも考えつくことではあろう.
[研究の場]手術室から高圧酸素室からICUへ
[対象]二酸化炭素塞栓の症例
[使用薬物と機器]高圧酸素
[測定項目]呼吸と循環のパラメーターと神経学的な検索
[方法と結果] 症例は38歳.不妊に対して腹腔鏡と子宮鏡の予定.合併症としては運動喘息(抄者註:運動すると発作の起る型の喘息.気道の乾燥と過換気が重要な病因と考えられている).前に3回の全身麻酔歴があるがいずれも特記すべきことなし. 麻酔は笑気/エンフルレン/少量のフェンタニル.モニタ−は,EKG,自動血圧計,体温計,パルスオキシメーター,カプノグラフを使用した. まず,デキストランを使用して子宮鏡を施行し無事に終了した.次に,二酸化炭素を圧12mmHgで注入しはじめて2分後に,心室細動になった.PETco2 は34mmHgから9mmHgに低下した. 型通り蘇生術を施行した.アドレナリン,リドカイン,カウンターショックなどで簡単に蘇生した.血液ガスはすべて正常だった.
[結果] 回復室で意識の回復が遅く,はげしい体動があり,聴診でラッセルがきこえた.血液ガスは自発呼吸ではPao2 が50mmHg以下と低く(FIo2 =0.5),X線の所見とあわせて“肺水腫”と診断した. 瞳孔の対光反射は遅かった.中枢神経系には局所所見はなかった. 中枢神経系の状態が憂慮されたので,高圧酸素を使用した.3気圧で30分,2.5気圧で60分使用した.術後12時間の時点で,完全に覚醒した. 翌日(術後第1日)から急速に改善し,第2日に抜管した.後遺症は残らなかった.
[結論] 二酸化炭素塞栓でも高圧酸素適用の可能性がある.
Carbon dioxide embolism treated with hyperbaric oxygen McGrath BJ, Zimmerman JE, Williams JF, Parmet J Can J Anaesth. 36(5):586-589,1989
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諏訪邦夫
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