二酸化炭素塞栓は気道内二酸化炭素モニターで検出できる
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[目的] 二酸化炭素塞栓での気道内二酸化炭素の変化を検証する.症例報告である.
[背景] 空気塞栓をはじめ,各種塞栓で,気道内二酸化炭素曲線が異常になる.一般に,人工呼吸ではPETco2 が低下する.ところが,二酸化炭素塞栓では逆にPETco2 が上昇する可能性があるが,実際にそうなることを確認した.他の塞栓とは異なる点である.腹腔鏡自体による二酸化炭素塞栓の頻度としては,11万例に15例とか6万3千例に1例といったデータが報告されている.
[研究の場]手術室
[対象]若年健康女子1例の症例報告
[使用薬物と機器]カプノグラフ
[測定項目]気道内二酸化炭素曲線
[方法と結果] 症例は32歳.麻酔は笑気/エンフルレン/少量のフェンタニル/SCC点滴.自動血圧計と胸壁聴診器と二酸化炭素モニタ−を使用した.二酸化炭素を3L/分の速度で注入しはじめて20秒で,聴診器であらい収縮期雑音が聞こえ,ほぼ同時にPETco2 の記録が少し上昇した. ガス塞栓は収縮期雑音と拡張期雑音の双方で検出した. 気道内二酸化炭素曲線のFETco2 が,3.8%から突然4.2%に上昇し,ついで30秒間に4.0%に低下した. 二酸化炭素の注入は即座に中止し,カテーテルは抜去した. その後,針の位置をかえて穿刺しなおし,無事に処置を完了した. 患者は順調に回復し後遺症はみられなかった. この患者の場合,はじめにカテーテルをいれて二酸化炭素の注入を開始した時点でカテーテルが静脈に入っていたものと推察される.
[結論] 腹腔鏡の際に気道内二酸化炭素曲線が急に上昇すれば,二酸化炭素塞栓のサインである.
Shulman D, Aronson HB. Capnography in the early diagnosis of carbon dioxide embolism during laparoscopy. CAN ANAESTH SOC J. 1984,31:455-459.
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諏訪邦夫
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