腹腔鏡下胆嚢で肺気量が激減!
--------------------------------------------------------------------------------
[目的] LCC(内視鏡的胆嚢摘出術:laparoscopic cholecystectomy)の際の呼吸機能の変化を,FVCとFEV1.0 でみる.
[背景] LCCが急速に増えている.その他にも内視鏡操作による手術が急増する傾向がある.それに対する呼吸機能面からの分析は少ない.
[研究の場] Sacred Heart Hospital の病室と検査室で術前と術後に.
[対象] LCCを受けた患者22例.平均年齢49歳.男子8例,女子14例.喫煙者を含むが,明確な慢性閉塞性肺疾患患者は含まない.
[使用薬物と機器]標準的なスパイロ装置.
[測定項目] スパイロを術前と手術後第1日に施行.装置もテクニシャンも同一だと言うことである.
[方法] 前向きに予定して研究プログラムを施行.
[解析] FVCとFEV1.0 の低下を,術前値と比較して評価.
[結果] FVCが41%低下した.低下の度合いは個人差が大きかった.最低9%〜最高83%も低下した. FEV1.0 も41%低下した.低下の度合いはやはり個人差が大きく,最低9%〜最高83%であった.(数値は,この下の桁はFVCとは異なる) 年齢,性,喫煙歴との関係は,とくに検出できなかった. 術後,臨床的に問題となるような肺合併症は一例も生じなかった.
[結論] LLCの術後は,FVCとFEV1.0 が著減する.しかし,肺合併症が増加するとはいえない.
[抄者註] 所見は面白いが,書き方がいい加減で,こまった論文である.麻酔法・測定体位・手術の際の腹腔内圧の規定など,必要な情報が記載されていない.術前測定は坐位で,術後測定は仰臥位で行ったと意地悪くかんぐれば(可能性は皆無ではない),所見は簡単に説明できる.三井記念病院の小西晃生先生の類似の測定では,変化の方向は論文の所見と一致したが,程度はずっと少なくVC低下は平均12%程度だったという(私信).もっとも,アメリカ人と日本人は,特に胆石の患者では肥満度が全く異なるので,程度の差も説明はできるかもしれない.
Barnett RB, Clement GS, Drizin GS, Josselson AS, Prince DS. Pulmonary changes after laparoscopic cholecystectomy. Surg Laparoscopy & Endoxcopy 1992.2:125-127.
--------------------------------------------------------------------------------
諏訪邦夫
| |